おそれにうちかつ

『モモ』、『はてしない物語』を書いたミヒャエル・エンデの、児童文学での処女作『ジム・ボタンの機関車大旅行』では、「おそれにうちかつ」ことが、ひとつのテーマになっていると思います。ある場面で、主人公の少年ジムは、突然現れた「見かけ巨人」に驚き、共に旅をする機関士ルーカスに「逃げよう」と言います。

「おちつけおちつけ!」ルーカスはそういって・・・巨人をじっくり観察しました。・・・「大きいだけで、なかなかきちんとした男じゃないかな。」・・・
「そうだろ、・・・大きいからって、ばけものとはかぎらない。」・・・・・・
「あんなとほうもない大きさだから、きみは信用しないけどね。」ルーカスはいいました。「しかし、それは理由にならない。自分が大きいからって、あいつ自身、それをどうすることもできないんだ。」・・・・・・
「こわがっちゃだめだ。こわいと思うと、事実よりずっとわるく見てしまうものだよ。」
(『ジム・ボタンの機関車大旅行』ミヒャエル・エンデ作、上田真而子訳、岩波書店、176〜180頁)

「こわいと思うと、事実よりずっとわるく見てしまう」、何かを怖れ、恐がってしまう心理の本質をついた言葉であるように思いました。